今はどうだか知らないが、かって『SEになるには強靱な体力が必要である』と言われた時代があった。
当時は、まさに的を得た明言だった。
社会人2年目、ようやく業務の流れが理解し始めた頃、大きな試練が待ち受けていた。
所属部署のシステム開発部の担当プロジェクトチームが管理ミスを起こした。
どうやら委託会社の進捗管理ミスで、出来たソフトウェアが使い物にならなかったらしい。
先輩社員数名とその対応に追われた。最終的に大阪と名古屋支社の同チームの技術者も東京に応援に駆け付け、10人ほどの体制で突貫工事でプログラム対応に追われた。
誰もが知る大企業のシステム。社会人2年目にして完全徹夜(睡眠時間なし)を経験する。
しかし、数日間でクリアできる作業量じゃなかった。
徹夜したその日も徹夜する。2週間土日もなく殆ど泊まり込み作業が続いた。
当然、思考回路は破滅状態。作業効率なんか限りなくゼロ!
それでも先輩社員は、思考回路ショート寸前でプログラム対応をしていた。当時の私にはとても真似ができなかった。
後にも先にも、これ以上つらい徹夜作業は経験したことはない。
ピークは2週間ほどだったが、帰宅できるようになってからも終電間際まで対応する体制が1か月近く続いた。
広いフロアに朝9時間際になると次々に出社してくる社員が、床やソファーに死んだように横たわる我々をみて異様に思ったはずだ。
他の社員は、勤務時間も我々を避けるように近づいてこなかった。
当時「布団で眠りたい・・・」、何度も思ったもんだ。
途中、仮眠と着替えに日中の2時頃にアパート(下宿)に帰ったことがある。
布団に寝転がったらそのまま寝てしまい、システム部長から電話が掛かってきたことがある。
「すまないが、これから出社してきてくれないかな…」と。
仮眠のつもりが夕方過ぎまで寝過ごしてしまったのだ。
とにかく人が足りない。当然、社内は沢山技術者がいたが、システムを知らないことには応援が出来ないのだ。
「すみません!寝過ごしました」と、普通の人が退社する時間に出社する。
私が戻ったときも先輩社員は、黙々とプログラムにパッチをかけていた。
寝過ごした自分に誰も文句は言わなかった。既に戦友みたいな意識があったのかもしれない。
この実態だけ見れば、ブラック企業と思うかもしれない。
しかし、断じてブラック企業と意味合いが異なる。当時のコンピュータ業界はどこも似たようなもんだ。
今の大手有名IT企業も不夜城が多い。どこも日々格闘しているのだ。
私が社会人2年目の、遠い昔の体験談です。