ティム・クック
Leander Kahney 著/堤 沙織 (訳)
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」は、竜馬が近江屋で暗殺されて小説は終わっている。竜馬が亡くなった直後がとても気になる。言うなれば、この本は竜馬の亡くなった後の気になるところを描いてくれている。
2011年10月5日 ジョブズが亡くなり、ティム・クックがCEOとなった。ジョブズ亡きティムの経営手腕が描かれている。但し、350頁のいたるところに「ジョブズ」の陰が見えている。
ティムは、12年間のIBM/インテリジェント・エレクトロニクス/コンパック/アップルと全てIT企業を歩んできた。その頃のアップルは破産の危機に瀕していたにも関わらず、ティムはアップルに移る決心をしている。ジョブズがジョン・スカリーを口説いたような熱い説得によるものだ。
「コンパックを辞めるなんて馬鹿げている」と皆から言われたが、それでもアップルに移った。創造の天才と一緒に働く一生に一度の機会だと感じたからだとか。
ティム・クックは、トヨタのJIT(ジャスト・イン・タイム)方式に代表するオペレーションに精通していた。ティムはSAP R/3を導入し、僅か就任7カ月で在庫保管日数30日から6日に短縮した。信じられないが1999年までに在庫数は2日分まで削減されたとか・・・さすがにこれは言い過ぎな記載だと思う。
数あるジョブズ本と大きく異なるのは、製品を創造するジョブズと全く異なり、大手製造業で見られるサプライチェーンの取り組みだ。ティムは時間通りに列車を走らせるオペレーションに熟知し、ジョブズ健在時に見事に高い成果を納めていた。
タイプの異なるティムを何故ジョブズはCEOに任せたのか何となく分かる。ティムを知る人の感想は「起きている間は ほとんど働いている」とか。イーロンマスクと同様に とにかくよく働くハードワーカーだ。
ティムは自らをゲイであることをカミングアウトしている。本の後半は、面白みに欠ける環境問題や機密保護の内容が続き、工場労働者の内容にも触れてある。大企業ならではの問題が続く。
本の内容は年月が前後するし、アップルの製品やサービス名が至るところで出てくる。完全理解するには、例えばiPhoneなどをバージョン別に画像を並べながら読みたいところ。
ジョブズ亡き後に更なる成長を遂げているアップル、まだ見ぬ新しい分野、医薬品・健康・フィットネス・自動車・スマートホームに参入するのだろうか?
いや~!世界を代表する大企業の頭脳って凄いよ。