ワードパーフェクト(#2/2)
ワードパーフェクト vs マイクロソフト ワード
一太郎もワードパーフェクトも日本語変換機能の有無の違いはあれど、マイクロソフトから似たり寄ったりの攻撃を受けだ。
一太郎はDOSの時代から日本語ワープロソフトとして完成度は高く、評価は非常に高かった。マイクロソフトは後発でWORDを出すものの日本語を研究しまくった一太郎には遠く見劣りがした。あくまでも私のその頃の感想だが当時は誰もがそう思ったはずだ。

品質は間違いなく一太郎の方がWORDより上だった。特に日本語変換機能ATOKとマイクロソフトIMEとは完成度が違った。初期のIMEはエー・アイ・ソフトのOEMであり、強い拘りの無い私でさえも IMEの使い勝手の悪さを感じたものだ。
そんな理由かは知らないが、マイクロソフトはATOKのOEM提供を打診したらしい。もし、ウインドウズにATOKが標準搭載されたら「一太郎 vs ワード」の構図は大きく変わっていただろう。
しかし、ジャストシステムはこれを拒んだ。

WordPerfect 5.1 for Windows
ワードパーフェクトもDOS製品の人気は高かったが、Windows対応が遅かった。
Windowsがどんどん洗練され、Windows3.0が人気を博しても、ワードパーフェクトはDOSバージョンの製品投入を続けた。
当時ワードパーフェクトのCEOが 「DOS版で十分じゃないか、何故ウインドウズに移行する必要があるんだ?」なんてことを業界専門誌に応えていた気がする。気持ちは分かる。既にDOSで完成されていたからだ。これは一太郎も同じだ。
Windows版とOS/2版の開発判断も災いし、Windows版を投入したものの後手に回っている。

ジャストウインドウ
片や一太郎はWindowsへの対応は決して遅くはなかったし、対応に余裕さえ感じた。ジャストウインドウなるDOSプラットフォームで技術力の高さを示した。当時の私はジャストウインドウを見て、技術力の高さにとても関心した。この頃のジャストシステムは、優秀な技術者が徳島に集る一流ソフトメーカーのひとつだった。
結果を先に言えばDOSからWindowsへの移行あたりに もたつきがあった。と言うよりWindowsが爆発的に普及し、冷静に市場判断する時間が無かったのが正解だと思う。あれよあれよと言う間にWORDの完成度は向上していくのだから。
日本国内におけるPCは (1) Word と Excel のバンドル版、(2) 一太郎 と Lotus1-2-3 のバンドル版のどちらか選んでWindowsPCを販売するスタイルを取った。
(1)、(2)のどちらのバンドル版が売れたかって? もし、当時あなたがその場にいたら どちらを買うか?それが結果だ。日本国内では 一太郎 と Lotus1-2-3 はどんどんシェアは奪われていった。米国国内は一太郎の代わりにワードパーフェクトとなる。

WordPerfect 6.1 for Windows
マイクロソフトはOSを持つ圧倒的有利な立場を利用した。消費者はOSを開発するマイクロソフトのアプリケーション製品のほうが相性が良いと思うのは自然だし、マイクロソフトもOS機能と連携を徹底的に強調して販売した。
バージョンアップを繰り返すたびにWordとExcelは洗練されていった。
最終的にWordPerfect社は1994年ノベルに、そのノベルも直ぐに1996年コーレルに売却し、最終的に市場から消えている。

Novell WordPerfect and Quattro Pro users guides
日本の場合、一太郎はPC98のNECが後押し、決してNECはソフトウェアメーカーを潰そうとしなかった。ハードはNEC、ソフトはジャストシステム、むしろ相乗効果をもたらした。
アメリカの場合、パートナーシップの考えは薄く、ライバルを吸収するか潰すかを考えるようだ。当時の米国の有名ソフトウェア企業の殆どは吸収されるか姿を消している。例えば、表計算の英雄 ロータス社は1995年にIBMに買収されている。一世を風靡したロータス社を知っている人にとって感慨深い。
日本の「一太郎」のジャストシステムも「桐」の管理工学研究所も、今も尚 定番ソフトをバージョンアップし販売している。日本の風土がそうさせるのだろう。これって物凄く素晴らしいことだ。