自分とコンピュータ史

010 音響カプラ/TSS端末


何を今更昔の話をしているんだ、IT業界にいるなら前を見ろと言われそうだが、この業界は圧倒的なスピードで変化している。これを知らずして今のコンピュータの激変を語ることは出来ない。

コンピュータを利用するにはコンピュータそのもの(ハードウェア)と、それを動かすためのプログラム(ソフトウェア)が必要となる。そして何よりもデータだ。情報が肥大化した近年は、ビッグデータなる用語も登場しているが、当時はそんな言葉なんかない。

プログラムとデータの入力手段は、紙カードや紙テープから1980年代には音響カプラを利用したタイプライターのような端末に変わった。勿論、当時は平行して使用していた。

今でこそ恐ろしく低機能スペックな音響カプラ端末であはあるが、当時としては高額な電子機器だった。この大型汎用機と接続する方法は、パソコン通信なる電話回線で接続した人であるならかなり想像し易い。

IBM汎用機の開発環境画面

ダイヤルアップ接続と呼ばれ、まず受話器を取って電話を掛ける。
勿論アナログ電話だ。ピポパで繋がる電話でない。電話の文字盤の穴に指を入れて右に回転させる往年のダイヤル回転式だ。

暫くすると接続した独特の音に変り音響カプラに受話器ごと差し込む。
勿論、音響カプラに受話器を先に差し込んでからダイヤルを回しても構わない。

汎用コンピュータと端末が接続状態になると、「繋がったよ!」の何らかの反応が起きる。そこからIDとパスワードを入力すれば、ホストコンピュータと接続される。
ここで始めてキーボードからコマンドを入力しながらプログラムやデータを打ち込んでいく。

但し、現在のディスプレイのような画面単位に表示されないため、1行1行ライン入力でデータ入力を行うのだ。

タイプライタ-みたいな端末だが、プログラム修正やデータ入力・変更・削除が可能だ。MS-DOSを知っている人ならイメージし易い。

プログラム修正であれば、そのプログラムの行範囲を指定すると、行番号が加わった範囲のプログラムが印字される。その印字されたプログラムを見て、今度はその行番号を指定してプログラムの命令を書き換える訳だ。データの場合は打ち込んでいけば良い。

実にのんびりした作業に写るかもしれないが、これでも当時は業界大手に在籍していた関係もあり、間違いなく最先端の環境でプログラム開発をしていたはずだ。

IBM汎用機の開発環境画面
IBM汎用機のダム端末画面

更に1980年初頭~中頃から大型コンピュータに直接つながったダム端末と呼ばれるモニター表示方式に変わる。これにより生産性は一気に向上し、それに伴ってコンピュータを利用する業務は一気に拡大する。汎用機とつなぐ当時の端末を「TSS端末」とか「ダム端末(Dumb Terminal)」、「ダムタン」と呼んでいた。当時を振り返って「ダム端」を「馬鹿端」なんて記載しているサイトを見かけるが、当時はそんなこと言う人なんか誰もいなかった。

IBM汎用機の開発環境画面
IBM汎用機のダム端末画面

プログラム開発もダム端末に入力すれば良くなり、徐々にキーパンチャーの職種は脅かされていった。

フロアに200名位のシステム開発者がいて、中央に高価なTSS端末が20~30台位設置してあり、プログラム作成や処理実行に端末を取りあったものだ。
予約表を記入して、まさにTSS(時分割)端末を人間が時分割して使っていたんだな。

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