自分とコンピュータ史

122 ライバルは空の上

IBM PC DOS誕生ストーリー(#1/3)
1980年7月~1981年6月

マイクロソフトの誕生を知りたければ、30年前(1992年12月)に発行された560頁に及ぶ書籍 Bill Gates HARD DRIVE がお薦めだ。その後に発行されるビル・ゲイツの幾つもの関連本の原点でもある。当然 ウェブで語られている多くのライターが書いてある情報の多くは、この本から引用している。まあ、私もそれからの引用だけどね(笑)。


IBM PC と CPU の関係/クリックで拡大(PDF版)

前々回の「IBM PC と CPU の関係」を再掲する。
8bitのi8080の次が16bitのi8086、このi8086の廉価版がi8088だ。IBMの初代PCもこのi8088だ。8088は8bitの特性を備えた16bit CPUだ。i8086より処理スピードは遅いがコストを抑えられる。

i8086CPUが登場しだす頃、IBMはPC市場に短期間で参入するためあらゆる手段を模索していた。
決定事項は、
・CPUはi8088(16bit)
・DOSを外部から調達する
・オープンアーキテクチャ、既成の部品を外部メーカーから調達する
・販売をIBMの販売網でなく外部販売網で行う

1st Meeting

1980年7月21日 IBM ジャック・サムズからゲイツに電話があった。サムズはIBM 360を開発担当した人物だ。明日はご都合如何ですか?と。天下のIBMだから断るはずもなく予定を変更して会う。

翌22日IBMのサムズら3名がマイクロソフトに訪れる。MS側は ビル.ゲイツ、ポール.アレン、スティーブ.バルマー。最初に守秘義務契約書にサインを求められる。サムズはMSに取り留めもない質問をしまくった、探りを入れた訳だ。

2nd Meeting

1ヶ月後の8月21日、IBM5名(弁護士含む)、MS5名(HARD DRIVEの書籍はゲイツ、アレン、バルマー、西、ゲイツの父=弁護士だが、脇先生のビル・ゲイツ本では出席者は若干異なる)、再び守秘義務契約書にサインを求められ、ここでIBMはPCを市場投入することを述べる。(※注)
但し、いきなりOSの開発依頼ではなく新IBMマシン用にROM-BASICを供給して欲しい旨だったらしい。この頃のマイクロソフトはBASICが有名だったから納得する。

3rd & 4th Meeting

詳細な打ち合わせ。このときIBMはBASICの他、FORTRAN、COBOL、Pascalも供給して欲しいと言ってくる(納期はそれぞれ異なる)。MSにとって好条件極まりない。ゲイツは、それならフロッピーディスクドライブ(FDD)が必要、OSも必要と言いだす。
しかし、MSはOSを持っていなかった、当時のOSと言えばCP/Mだった。

CP/Mとは デジタルリサーチ社のゲアリー・キルドールが開発した8bit CPU、当時 市場をほぼ独占する人気DOSだ。キルドールは小さな会社ながらCP/Mで一儲けし、クルマや自家用飛行機に熱中していた。

ゲイツはCP/Mが欲しいならキルドールと会えば良いと、特に親しい関係でもなかったが既知であるデジタルリサーチ社に電話を繋いだ。「明日、重要なお客様(IBMの社名を告げず)が向かうので丁重におもてなしして欲しい 」と。このとき一度ゲイツはチャンスをキルドールに譲ったことになる。

但し、CP/Mは 16bit向けではなかった。なかなか16bit OSを出さないためシアトル・コンピュータ・プロダクツ社のティム・パターソンがQDOS(急いで作った あつらいDOS)なるものを開発販売していた。

ライバルは空の上

翌日、サムズらはキルドールに会いに行く。しかし、キルドールはそこに居なかった。そこにはキルドールの妻ドロシーと弁護士が居た。守秘義務契約書にサインを求めると、IBMにとっては単なる形式的なものだったのだろうが、意味を理解出来ないドロシーはサインを拒んだ。サムズらIBM一行は打ち合わせが出来ず引き返し、キルドールは一世一代のチャンスを失う。

ビジネスで飛行機に乗っている等の説があるが、キルドールは自家用飛行機で操縦を楽しんでいたのがもっぱらのようだ。(次回)


(※注)IBMとマイクロソフトの関連書籍を数冊読むと、本によって微妙に異なっている。
歴史なんて同じ出来事でも捉え方で正反対になったりするもんだ。私はHARD DRIVE と 脇先生のビル・ゲイツⅠとⅡの内容をベースとして記すが、2つの本でさえ微妙に違う。脇先生は昔、HARD DRIVEを読んで「とても面白かった」と別の自著「パソコン世界の嵐 112頁」に感想を述べているので、その後に出版している脇先生の内容が恐らく正しいと思う。いまだネットでも異なる記事を見かけるが・・・。

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