IBM OS/2 vs MS-Windows(#1/2)
20代、30代の人は実感がないかもしれないけど、PCを広く市場に導いたのはIBMだ。世界中のPCはIBM PC/ATが大きく影響を与え、AT互換機が市場に溢れかえった。DOS/Vだって日本IBMが日本市場に広めたようなものだ。これによりNEC PC98は消えることになるが。
大型機からPCへ、即ちクライアント/サーバーシステムを牽引したのもIBMだ。コンピュータ市場はIBMが絶対的王者だったし、ましてやマイクロソフトでもアップルでもその後に登場するグーグルでもなかった。
Microsoft OS/2 1.1
IBMは暫くの期間、マイクロソフトとDOSを共同開発している。IBMはDOS版の改良を重ねながら次世代OSを描いていた。それが OS/2 なんだ。
これによりマイクロソフトはDOS、OS/2、Windowsを並行して開発する期間があった。だから最初のOS/2とWindowsは似たり寄ったりでメモリ管理さえも初期バージョンは似ていた(と思う…多分ね😆)。
IBMとマイクロソフトはテーブルの上半身は商談をしながら、テーブルの下はお互いを牽制していたんだね。特にマイクロソフトはその傾向が強かった。何よりも絶対王者のIBMはマイクロソフトを甘く見ていた。
PC DOS と MS-DOS/クリックで拡大
1985年 OS/2より2年早くWindows1.0を発表する。残念ながらWindows1.0は評判が悪かった。Windows1.0に限らず、マイクロソフト製品の1.0版は どれもイマイチな印象が強い。まず先に商品をお披露目し、市場認知させ丁寧にバージョンアップを重ね洗練させていった。
この頃は、Windows と OS/2 のどちらが天下を取るか分からない時期が数年あった。PC市場は「Windowsか? OS/2か?」と話題になった。「間違いなくOS/2が天下を取るだろう」と言うPC評論家は結構いた。みんな この頃の絶対王者であるIBMの底力を知っていたからだろう。
IBM OS/2 2.0 Workplace Shell
私が尊敬する脇先生も本命はOS/2だと、当時の発行した本で堂々と主張していた😆
「有力なOSの本命はIBMのOS/2である。過去のソフトウェアを継承する意味からMS-DOSも引き続き使われるかもしれないが、ある時期から本格的にOS/2への移行が行われるだろう。(中略)おそらくOS/2はUNIXの良いところをどんどん吸収し、どちらがどちらか分からなくなるのではないかと思う」 パソコン新世紀 著 脇英世 講談社 1978年発行 172頁
名著「ハードドライブ」にもOS/2優勢の見解はある。467頁には、「1988年初め、OS/2が初出荷されてしばらくした頃、OS/2の売上は2年間のうちにDOSを上回るだろう、とIBMとマイクロソフトは予想した。「今後10年間で、何百万人というプログラマーやユーザーたちがこのシステムを利用するだろう」・・・(中略)・・・ビル・ゲイツはそのように語った。確かにマイクロソフトとIBMの共同声明では、90年代のプラットフォームはOS/2としていた。
反面、「市場はOS/2に背を向けるだろう」と予想する人もいた。理由は名著「ハードドライブ」の同じページに書かれてあるが、要は「誰も分からない」が正解だった。
ビル・ゲイツの書籍「ハードドライブ」470頁には、ビル・ゲイツは共同声明から一転してOS/2プロジェクトから開発者を撤退させ、マイクロソフトはIBMを怒らせながらもWindows3.0の開発を積極的に推し進めることになると記載されてある。決別だ。(続く)