111 ブラウザ戦争(その2)
1994年頃から1998年頃まで
インターネット・エクスプローラーの登場
急ピッチで開発リリースされた Internet Explorer(日本版登場はMS Plus!のIE 2.0)は、個人的にはしっくりこないため Netscape Navigator を IE4が出る頃まで使用し続けていた。この頃、Windows95にソフトウェアをインストールすると、MSN(Microsoft Network)にユーザー登録に誘導され、やたら迷惑だったんだなあ。
Internet Explorer 1.0 Showing Yahoo.com Homepage (1995)
Windows95が世に出る直前までは、ブラウザはネスケが9割に迫るシェアを誇っていたと思う。ほぼブラウザの選択肢がなかったのも理由にあるけどね。1996年にOperaなるブラウザが登場し、少しばかり体感したが やはり自分としてはネスケのほうがしっくりきた。
Internet Explorer 2.0 for Windows (Italian) (1995)
Windows95発売直線の1995年1月、ビルゲイツはネットスケープ社の買収さえも打診した。~中略~ マイクロソフトのトーマス・リアドンは、ネットスケープをWindows95用のインターネット・ブラウザから追い出すべきとさえ言った。「ビル・ゲイツⅡ 脇 英世 著 358頁より」
1995年6月、マイクロソフトとネットスケープは会談を行っている。続けて同書368頁を要約すると、Windows95のIEと競合するなと言う内容だった。マイクロソフトとネットスケープの勢力範囲を引くことを提案。即ち、もしネットスケープがWindows95のブラウザ市場から手を引けば、マイクロソフトは、Windows3.1、Mac、UNIXブラウザ市場には進出しない。提案を受け入れなければ、マイクロソフトはネットスケープを潰しにかかる・・・会談に出席したネットスケープ側のジム・バークスデールの証言とのこと。
Internet Explorer 3.0 for Windows (1996)
同書「ビル・ゲイツⅡ」にはマイクロソフトのしたたかな記述が幾つも書かれてある。Windows95の発売が1995年8月に迫っていたことが大きな理由かもしれないが、ライバルは潰しにかかるマイクロソフトの手法の一つのようだ。
マイクロソフトの大攻勢
マイクロソフトはスパイグラスからライセンスを受けたNCSAモザイクを全て読解し、ネットスケープの機能を全て搭載し、さらにIEに独自機能を追加し、推奨ブラウザをIEに導いた。当時、サイトを閲覧するとき「推奨ブラウザIE」に仕向けるのだ。即ちサイト制作者がIE向きにサイトを作ってしまうのだ。
こうなるともう太刀打ち出来ない、Netscape Navigatorのシェアは下がる一方だ。
1998年3月、ネットスケープ社はNetscape Navigatorのソースコードを公開する(後のFireFoxはNetscape Navigatorの後継となる)。1998年11月、観念したマーク・アンドリーセンは、まだ黒字であったネットスケープ社を42億ドルでAOLに売却する。
しかし、買い取ったAOLは Netscape Navigator を十分に生かすことが出来なかった。その後、オープンソースのFirefoxと生き延びることになるんだ。
マーク・アンドリーセンの回想
ネットスケープ売却後、マーク・アンドリーセンと相棒的な存在ベン・ホロウィッツは「ラウドクラウド」なる会社を共同設立する。この頃に「クラウド」なる社名を付けるなんて、何て先見の目があったんだと驚く。
そのベン・ホロウィッツの著書「ハード・シングス」の35頁に無念なる記述がみかける。
ハード・シングス/ベン・ホロウィッツ著 日経BP社
1998年の末、われわれはマイクロソフトからのすさまじい圧力を受けていた。マイクロソフトはOS市場を事実上独占している強みを最大限に生かして、あらゆるジャンルのソフトウェアをウインドウズに無料でバンドルし、ライバルを潰しにかかっていた。ネットスケープもその攻撃をまともに浴びた一社だった。
IEのバージョン進化
Windows95の後付けでMicrosoft Plus!でInternet Explorer 1.0(日本発売時はIE 2.0)、1996年にはIE3.0、Windows98からIE 4.0がOSに提供される。Windows98のPCを買うとブラウザにIE4.0 がついてきた。
Windows98のSecond Edition(SE)でIEは 5.0に、WindowsME のIEは 5.5、WindowsXPのIEは 6.0へと着実に進化していった。
【関連】
110 Windows95の登場
【余談】
Windows95発売前のことになるが、脇先生の「ビル・ゲイツⅡ」に面白い記述がある。
マイクロソフトは発表会でIEを無料配布すると述べた。
契約は1本売れれば、ロイヤリティは入るが無償配布であれば、売らないのだからロイヤリティはゼロだ。即ちスパイグラス社に1銭も支払う必要がないとするマイクロソフトの理論だ。
当然、スパイグラスは猛反発する。
3年後の1997年1月に和解が成立し、マイクロソフトは800万ドルを支払うことになり、ライセンスも1998年末まで延長されたが、その頃になるとマイクロソフトはスパイグラスを必要としなくなった。「ビル・ゲイツⅡ 脇 英世 著」407頁
同様な内容が記載されている ブラウザー戦争勃発
画像:internet-explorer