かなり前のテレビの話だ。
よみうりテレビ系番組「ウェークアップ!」で桂文珍さんが司会をしていた頃の話。
日本でラジオ放送が始まったのは1925年(大正14年)、1928年(昭和3年)には全国放送が始まっている。
その頃、非常に人気のあった落語家 初代 桂春団治がいた。
吉本興業はラジオに芸人が出たら寄席にお客が来なくなる。だから芸人は絶対にラジオに出さなかった。
自宅に居ながら落語が聞けるのだから、普通に考えればもっともな話だ。落語を聞きたかったら寄席においで!って訳だ。
しかし、春団治はラジオに出演して落語を披露したのだ。
吉本興業の幹部は激怒した。
だが、意外なことが起きる。
「桂春団治の落語がこんなにおもしろいなら一度生で見たい」 と、春団治の落語を聞きに多くの人が寄席に来たのだった。
その反響を知り吉本興業は、仕方なくラジオで落語を中継するようになった。
ラジオを聞いた人は生の落語を聞きたくなり寄席に行く、寄席に行った客はラジオの落語も気になり聞きだす、知名度は広まり、人気はさらに広がる。
まともに考えたらマイナスになることが、逆手に取ることで2倍にも3倍にもなることがある。この落語の例なら100倍以上の効果だ。選択肢が無くなったら、逆手を取ることが正解の場合があるってことだ。
堂々と進むことが正解の場合もあれば、寝て待つことが正解の場合もある。
結局どう転ぶかは分からない、それが世の中だ。