昨年2020年度、個人的に最もよかった書籍は『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』だ。
日経BP社 1800円+tax(2020年2月18日第1刷、2020年2月25日第3刷、2020年3月14日購入)
最高に興奮する内容だ。
ご存知 みずほ銀行は第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が統合されたメガバンク。
本文の最初の書き出しは「東京スカイツリーの建設費七本分」から始まる。もう1行目で驚嘆だ。
私が40代の現役バリバリの頃、みずほ銀行の1行である日本興業銀行丸の内本店で開発勤務がある。エリートの人たちってこうした素晴らしい環境で仕事をするんだ・・・と思ったもんだ。
自分の20代、30代前半は、メインフレームでCOBOL開発が主な作業だった。まさに書籍に出ている大規模システムのプロジェクト要員として参画していた。
金融系は今も尚、COBOL言語で開発されている。流動性預金/為替取引/CIFなどメインフレームのz/OSで動作している。富士通、日本IBM、日立のメインフレーム同士は相性が良いのでそれぞれ使用されている。(もともとIBMのメインフレームOSを国産となる富士通、日立が真似したからだ)
今だCOBOLなのは、資産が膨大でCOBOLで開発せざるを得ないからだ。
但し、定期性預金/外為取引/ローン/与信などはLinuxによるJava言語となっている。
大規模システム構築経験者なら、そもそもそれぞれの巨大金融システムを統合することが、いかに大変かは身震いするほど知っている。
難航した大規模システム開発経験者の人であれば、不夜城の開発部隊。日々発生するアラーム対応。膨れ上がるトランザクションデータの応急処理。それに伴うシステム打ち合わせ、巨大システム故の開発の難しさ大変さがこの本では手に取るように伝わってくる。
今だから言えるが、当時の中目黒金融案件は、開発関係者には「足を踏み込んだら帰れない日々が続く」と恐れられていた案件だったのだ。まさに24時間闘えますか?のテレビCMが流行ったような戦場だった。
当時、テレビや新聞等で連休期間中にATMサービス停止の案内があった。それが一度や二度じゃなかった。その連休期間中にデータを本番機に切り替えるのだ。しかし、不運にもシステム障害が発生する。個人のクレジットや公共料金自動引き落とし、企業の給与振り込み等々・・・これらがシステム障害と重なったらどうなるか想像して欲しい。
そんな緊迫感を感じさせる完全実話だ。関係者は生きている気がしなかったはずだ。システム開発を良く知らない人でも緊張を感じ取れる内容。システム開発経験者なら唸ってしまう内容だ。
昨年読んだ技術書を除く書籍自分ベスト堂々の第1位は『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』かな…。関係者のみなさま 本当に本当にお疲れ様でした。