ちょっと古い話だけど、ビジネスマンの教訓となる話なので触れますね。Windows95が登場する少し前の話だから、知らない人も多いと思う。
まだDOS~Windows3.1が主流だった頃だ。
1994年10月バージニア州の、とある大学教授が [ペンティアム・プロセッサで非常に小さな値で割り算を行なうと、結果がおかしくなる浮動小数点演算の欠陥] なるレポートをインテルに送った。
インテルCEOのアンドリュー・グローブ(Andrew Grove)は、その事象を認めたが、事象を軽く考えてしまった。
わずかな設計ミスで、除算が90億回に1回の割合で誤った結果を出すと言うのだ。当然、グローブはこの問題を非常に気にし、大規模な調査を部下に指示する。
後日、グローブは報告書を読んでほっとする。
表計算であれば、27,000年間計算を続けても1回あるかないかの報告結果だったんだ。
欠陥箇所は修正したが、在庫CPUはそのまま出荷を継続した。
(注)「インテル戦略転換/著:Andrew S. Grove」からの数字
大学教授は複数の知人に不具合の事象をメールし、運悪くその噂が広まってしまう。同年11月22日、CNNがそれをかぎつけインテルに取材を申し込んできた。
インテル側は「わずかな欠陥で実害はない」としたが、CNNはインテルに取材をしたことを報道し、噂はあっと言う間に広まってしまうんだ。
インテルは企業や団体にはチップを交換を行っているし、一般ユーザーには何ら心配の必要は無いと説得をしている。多くのユーザーは、ゲーム・メール・パソコン通信・文書作成程度だからね。まず深刻な影響を及ぼすことはないと思うよね。
しかし、12月12日 IBMはペンティアム搭載機を全面出荷停止の措置を行う。天下のIBMがそうなら、他メーカーもこれに続いた。
インテルは奈落の底に突き落とされた。
既にインテルは数百万個のチップを出荷していたが、騒ぎを静めるため 全てのチップを交換する方針に変更せざるを得なくなってしまう。製造工程を見直し、欠陥CPUは全面破棄、全チップを交換することになった。
結論を言えば、インテルの対応が素早かったため、IBMの正常なPentium搭載マシンは再出荷することになった。他メーカーもこれに続いた。
インテルは途方もない損失を被った訳だ。不良在庫を一掃し出荷停止することは相当な覚悟が必要だが、こうした判断は仕事をするにおいて強い教訓となる話だね。
引用記事:インテル戦略転換