流通システム/物流システム徒然記
いよいよ これからストーリーは、在庫管理、多頻度小口配送、更にメーカーに於ける在庫圧縮、サプライチェーンマネジメント・・・全てが関係してきます。
岩国は尋ねた。「 何故、品切れの在庫を追加注文しないのですか?」
疲れきった店主の山本は言った。
「 追加注文したくても出来ないんです・・・」
「 洗剤は最低1ダース以上、ジュースは5ダース以上じゃなければ、問屋は受け付けてくれない。売れ足が遅い商品だと、これじゃ多すぎる。
品数を揃えようとすれば、どうしても まとめて注文しなければいけない。
そうすると在庫は山のようになる。うちは、そんな在庫を置く場所がない 」
今では考えられない商品群
収まりきらなくなった在庫の山NHK プロジェクトX 「日米逆転! コンビニを作った素人たち」より
いつしか倉庫にも収まりきらなくなった在庫商品は、店の2階の住居部分まで侵食していた。
おまけに多くの在庫を抱えると、その現在庫を把握管理しているだけでも多くの時間と労力が必要だった。
当時はパソコンなど存在しない。在庫管理のパッケージソフトなんて存在しなかった。
売れ残りを考えると1ダース単位のような商品は、注文したくても注文できない。
商品によっては有効期限も常に配慮する必要がある。
食品など売れ残り商品は廃棄するしかない。
廃棄商品は店側負担になるため廃棄を恐れると多めの注文は出来なかった。
全てが悪循環だった。
素人考えでは、まとまった単位でしか注文を受け付けてくれないのなら、小口で受け付けてくれれば話は簡単に解決する。
しかし、当時の卸業界の常識では、小口配送など到底受入られないことだった。
勿論、鈴木や清水は問屋に飛び込んで強く交渉した。
しかし、問屋は 「 そんな面倒なことは出来るはずがないじゃないか。小口配送など絶対受け入れられない 」ことごとく断られた。
スーパーであれば何十ダース、場合によっては何百ダースと注文がかかる。つまり何百何千個単位で注文が入る。
まだ世間で認知されていない一介のヨークセブンが、「 2~3個単位での注文を受け付けて下さい 」なんてお願いしても、相手にされるはずがなかった。
当時の業界常識からしても、問屋の言い分は良く理解できる。
ヨークセブンのプロジェクトメンバーと山本商店は窮地に立った。
この難問をクリア出来ない限りコンビニの成功は有り得ないのだ。