流通システム/物流システム徒然記
コンパック社は1982年に設立されたパソコンメーカーです。
IBM PC互換機として低価格戦略で瞬く間にトップ企業に躍り出ました。
1997年ノンストップコンピュータの代名詞タンデム社を買収し、破竹の勢いのコンパック社でしたが、良いことは長く続きません。
翌年の1998年には業績不振にあえぎ出します。
理由は何と在庫管理の失敗です。
大量生産でパソコンの価格を下げるのは良いのですが、パソコンの需要数と生産量の判断ミスをおこします。
早い話作り過ぎです。
生産した製品が工場の敷地内に積まれ、流通在庫を3ヶ月以上抱える羽目になります。
どこが問題なのか説明します。
例えば大型家電量販店クーペンギン電気に、コンパックパソコンが10台置かれていたとします。
この製品は消費者が購入して、お店は「有難うございました」となります。
そこで初めて1台さばける訳です。
商品在庫が少なくなって初めて 量販店クーペンギン電気はメーカーにオーダーします。
しかし、この製品が3ヶ月以上の在庫を抱えていることは、メーカーにとって3ヶ月以上その製品の現金を回収できないことを意味します。
製品はアメリカの工場、物流倉庫、流通倉庫のいたる場所で保管されていたでしょう。
空輸を含む運搬費/倉庫保管費/梱包費など全てを考えると、製品を供給するための物流コストは想像以上にかかります。
まだ問題はあります。
製品を作るための各部品メーカーに、「 今はお金が無いから、お金は製品が売れるまで待ってくれ! 」と言えません。
当然、在庫を現金に回収する前に部品メーカーに部品代を支払う必要が出るでしょう。
従業員の給料も待ったなしです。(実際は、かなりの従業員が解雇されます)
儲かっても儲からなくても、その他沢山の必要経費は発生します。
おまけにパソコン技術は日進月歩ゆえ 直ぐに製品は陳腐化します。
もし他社が新商品を出せば、ますます在庫製品の売れ行きは鈍るでしょう。
そんな訳で、間もなくコンパック社はヒューレット・パッカード社に吸収合併されるのでした。
いかに在庫調整って重要か分かる内容です。
(注)
2011年8月、米Hewlett-Packard(HP)は、今後 タブレット、スマートフォンからの撤退を決めた。
更に消費者向けパソコン事業からの撤退の検討もしている。
パソコン事業は同社の基幹事業の一つだったが、実現すれば大きな方針転換となる。