1995年12月初版
ビル・ゲイツ未来を語る(#2/4)
Windows95発売直後までの開発ストーリー
上のアイキャッチ画像の本は、自分の「未来を語る」の本をスキャンしたもので、初版 1995年12月11日、第4版 1996年3月11日と記載されている。わずか3ヶ月後に第4版だ、いかに人気が凄かったが分かる。
HARD DRIVE Bill Gates(左は洋書)
第3章まではマイクロソフト・ストーリーであり、HardDriveと同様に実話だ。HardDriveとかなり重複する内容だ。実話は説得力があるから非常に面白いが、この「未来を語る」はゲイツ自身の執筆だからさらに説得力があり面白い。
IBMとのDOS開発やOS/2の開発経緯も書いている。私が過去に投稿している内容と同じだが、文章がとても論理的で頭が良い人物なのが分かる…日本語翻訳の西和彦さんもしかりだ。
ゲイツ自らが語り、西和彦さん本人が翻訳するのは、私世代にとって涙が出るほど嬉しい。
1978年、売り上げの半分近くが日本からの金で占められるようになった。これは西和彦(ケイ)という驚くべき男のおかげだった。期待している数字の10倍以上だった。
日本に行ってケイと同じホテルに泊まると、数百万ドルの取引を決めるケイ宛の電話が一晩中ひっきりなしにかかってきて、これには度肝を抜かれた。それからの8年間、ケイはあらゆるチャンスをつかみつづけた。(P78から数ページを抜粋引用)
まさに2人は創業まもないマイクロソフト時代の戦友だ、友情の絆を感じる。それも世界のビル・ゲイツに賞賛されている、こんな事言われたら堪らないだろう。
【 DOS関連 】 IBM PC向けOSの開発【 OS/2関連 】 OS/2 vs Windows・・・そして別れ
さらなる大きな旅のはじまり スマホの予言
4章以降はこれから近未来の予想を書いている。
当時であれば夢物語の内容、今さら30年前の近未来のビル・ゲイツの予想を再読しても意味はないが、予想が大きく外れた箇所は少なく、多くは的を得ている。400ページ超の本ではあるが、取り上げる話題はそれほど多くない。一つ一つ丁寧に説明しているからだ。
例えば、P131からゲイツが語るウォレットPCは、まさに今のスマートフォンだ。いづれこんなことが出来るだろうの未来予想であり、それが現在提供されているスマホサービスそのものだ。
5章はインターネットのことを書いているが、何故かビル・ゲイツは他人事のように書いている。ゲイツはインターネットが登場した頃、インターネットを甘く考えていたと自身も認めている。その数年後、この本が出版される訳だが、マイクロソフトはネットスケープ社をコテンパンに叩き潰そうとする時期でもあるんだ。
ビル・ゲイツの考えた情報図書館
6章に登場する電子ブックの内容は、「本とほぼ同じサイズの筐体に、テキストや画像や動画を表示できる高解像度ディスプレイを搭載したマシンが開発されるだろう」と書いている。いづれ登場するiPadなどのタブレットのことだね。
自社製品であるエンカルタ(Encarta)百科事典なるツールにも触れている。エンカルタ百科事典(CD-ROM)は、この時代ならではの製品だ。物凄い手間暇を要する百科事典を手掛けようなんて普通は思わない。それを一企業が開発運営することが何とも凄い。
デモ版を試したことはあるが、個人的に知りたいのは百科事典の類の情報でなく、いま流行の音楽や自分のごく身近な情報だ。便利なオンライン版もあったようだが、私が入手したデモ版CD-ROMは殆ど使うことはなかった。やはりCD-ROM提供では情報量が圧倒的に少なかったのだ。
1993年からサービスを提供したが、検索エンジンの登場と2001年からウィキペディアを含む情報提供サイトが浸透し、徐々に下降線をたどり、2009年に販売終了となっている。
最初に構えたガレージオフィス/ラリー(左)とセルゲイの有名な1枚
話は逸れるが、この本が出版されて間もなく1998年にラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの二人がGoogleを立ち上げる。マイクロソフトは検索エンジンで大きな利益が見込めると思わなかったためこの分野に進出しなかった。Googleを立ち上げた2人は使命感だけで検索エンジンの開発に突き進めた。初期は利益なんかまるでなかった。
その後、Googleはクリックすることで莫大な利益を生み出す営業手法を生み出すが、その手法はこっそり展開していく。もしも、ビル・ゲイツに知られたら、マイクロソフトは検索エンジン分野にも莫大な資金で投入し、あの手この手でGoogleを潰しにかかるからね。
マイクロソフトは、Windows95をリリース後に MSN Serch なる検索サービスを始めるのだが、広く浸透しなかった。私も存在は知っていたが殆ど活用することはなかった。既に検索サービスはGoogleが1歩も2歩も先を突っ走ていたからだ。
その後ラリーとサーゲイは、ビル・ゲイツのエンカルタ構想と比較にならない程の超巨大情報図書館を構築することになるんだね。
仮想現実なる未来
興味深いのはVR(仮想現実)を語っていることだ。このときゲイツはVRを体験し、ゴーグルを長く使用していると頭痛がしてくるとさえ書いている。30年以上前に書いた本でだ。
この本の出版から25年以上経った2019年に、私はOculus Questを購入している。ゴーグルをして30分もすると、確かに船酔いのような何とも言えない気持ち悪さを何度も経験する…。
ゲイツはあらゆる知識人から得た情報を整理し、自らの体験を加え、溢れる情熱をもって語ったんだね。30年後に再読すると、さすがに刺激のない内容ではあるが、予想と大差ない世界が広がっている。ゲイツはやっぱり凄い人物だったんだね。