自分コンピュータ史

150 IBM OS/2の撤退、NT開発に集結

1988年~1993年にNTリリースまで
WindowsNT開発の道(#3/4)

業界に在籍している人なら、どんな感じでマイクロソフトは IBM OS/2 から撤退したのか興味があるかもしれない。

「闘うプログラマー」には、その記載がある。5章「熊の咆哮」の前半部分に多くのページを割いている。OS/2とNTの立ち位置が知りたい人には、この内容はとても興味深い。片手落ちなのはマイクロソフトのNT開発ストーリーのため、IBM側の見解が何も書かれていないことくらいかな。

OS/2のマイクロソフトが担当する開発責任者でありNT開発責任者であるポール・マリッツなる人がいた。カトラーは実際の開発リーダーだが、マリッツはNT全体を計画推進する責任者って感じだ。

1990年頃からマリッツは、OS/2を開発しながらNTの開発を行うことは無理だとゲイツとバルマーに説得していたが意見は無視されていた。
マイクロソフトがOS/2から撤退すれば、IBMは宣戦布告と受け止めて報復してくるだろう。IBMがマイクロソフトのOSを使わなくなれば、IBM互換PCを販売している多くのメーカーもマイクロソフトを切り捨てるだろう。(闘うプログラマー 上巻 154頁)

このリスクがあることをゲイツもバルマーも恐れていたからだ。IBMの力はそれだけ絶大だったんだ。


Microsoft OS/2 1.1 (出典

だからマイクロソフトは騙し騙しOS/2開発に参加していたが、Windows3.0が市場に登場してから徐々にゲイツの考えが変わっていく。Windows3.0で世間の評価が劇的に変わってきたからなんだね。

1990年代中頃、マリッツはNTをWindowsに移行する計画を画策し始める。Windows3.0がリリース(1990年)され、高い評価し始める頃だ。年代的にも合っている。

この期間もマイクロソフトは、OS/2部隊、Windows部隊、NT部隊が稼働している。とんでもない資源の無駄使いだ。この頃、ようやくリリースまじかだったWindows3.1は、ビジネスに十分活用可能な完成度になっていた。

「もうIBMを頼らなくてもやっていける」と、ゲイツの考えは変わっていったらしい。

1991年1月17日、IBMとOS/2 API開発会議の席上で、OS/2を開発する予定はないとマイクロソフトの開発メンバーであるルコフスキーが告げる。会議に参加していたIBM側から罵声が飛んだ。まあ、そりゃそうだろう。

1992年に日本でWindows3.1が登場するや一斉にDOSからWindowsPCに切り替える企業は多かった。私も実際に会社で使用した初めてのWindowsは3.1からだった。


IBM OS/2 2.0 Workplace Shell (出典

マイクロソフトはIBMと話し合いを続け、両社合意を取ろうとしたが、最終的に共同開発にピリオドをうつ。1992年のことだ。

ほどなくIBMでOS/2を開発していたマイクロソフト部隊150名は撤退し、マイクロソフトに戻ってくる。
IBMはOS/2を意地でも開発し、市場に浸透させるしかなくなった。

Windows3.1の大成功により、NTはWindows3.1にルック&フィールを合わせWindowsNT3.1と命名するが、ここから壮絶な日々がはじまる。WindowsのアプリケーションをNTでも動くするようにしなければいけない。Windows3.1は16bitだが、WindowsNTは32bit向けだ。しかも、アプリケーションは遅くなってはいけない。

この経緯は読む分にはとても面白い 😆 付け加えるならIBM側の見解なるOS/2開発ストーリーも知りたくなるってもんだ。

【関連】126 OS/2 対 Windows・・・そして別れ💔

ビル・ゲイツ 未来を語る

「闘うプログラマー」は初版1994年12月に発売されているが、1年後の1995年12月「ビル・ゲイツ 未来を語る」の104~117頁にも詳しく撤退理由を書いている。ゲイツ本人が書き、戦友 西和彦さん翻訳なるものだ。

私(ゲイツ)は、マイクロソフトがOS/2の開発に参加したのは、IBMのOS/2もWinsowsと似たようなものにし、ソフトメーカーはちょっと変更を加えるだけで、両OSのどちらでも動作できると信じていた。と。
しかし、IBMはメインフレームでもミッドレンジでもアプリケーションが動作することに固執した。たびかさなる仕様変更、スケジュール管理で、OS/2はパソコンのOSと言うより扱いにくいメインフレームのOSだった。
と・・・。

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