自分コンピュータ史

171 サン、繁栄から終焉へ

1995年~2009年
サン・マイクロシステムズ(#6/6)

サンのスコット・マクニール、オラクルのラリー・エリソンなど、ビル・ゲイツに敵対意識を持つ企業は数多い。

アメリカで競合するIT企業は、買収か潰しにかかる事例が多く、まさに食うか食われるか感が漂う。よって、トップ経営者は厳しい経営感覚がないと生き残れない。これは、日本のIT企業以上に厳しい気がする。


ヒット・リフレッシュ

ちなみに現在のマイクロソフトCEO サティア・ナデラは、1990年に大学を卒業して、サン・マイクロシステムズに就職しているんだ。ナデラはサンに2年間在籍し、そこで驚く才能の持ち主たちと会ったことをこの本で語っている。サンのトップであるスコット・マクニールしかり、UNIXの神様ビル・ジョイしかり、Javaを開発したジェームズ・ゴスリンしかり、エリック・シュミットしかりだ。


Google創設者2人とエリック・シュミット(左)

エリック・シュミットは、サンの幹部として引き抜かれ、その後ノベルを経由し、グーグルの経営に加わる。グーグルの創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジが若すぎたからなんだ。サンに在籍していた頃のナデラは、ロータス社に出向き、ロータス123をサン向けに移植作業を行っている。「ヒット・リフレッシュ(2017年11月 第1版)」43頁を要約+自己補足

1992年にサンからマイクロソフトに移り、その後 マイクロソフトの歴代3番目のCEOになる。マクニールが強く敵対するマイクロソフトのトップに座るなるなんて何とも皮肉な話だよね。


SPARC/Solaris(Entry Midrange High end) 画像:富士通

サンはSPARCとソラリス、Javaなる強力な武器を持っていたが、次第にワークステーション(以下WS)の売れ行きは鈍化していく。これはWindowsNT(以下NT)の登場が大きく影響している。PC市場はWSを脅かすまでの市場へと成長する。必然的にWSは価格を下げざるを得なくなるんだ。

更にそれだけじゃない。IBMとHPはNTを加えたサーバーも販売する。つまりマイクロソフトはサーバー分野にも進出していった。

更に更に1997年にタンデム、1998年にDECを買収したコンパック・コンピュータもサーバー市場に進出する。デルもサーバーに進出する。富士通など日本企業もWindowsPCを販売しつつ、UNIXとNTサーバー機を販売し、サーバー市場に進出する。いづれコンパックは無理がたたって自滅するんだけどね。


Why did Sun buy MySQL? 出典

利を得るのはマイクロソフトって訳だ。ビル・ゲイツは本当に賢いね。結果論だけど サンは意地を捨て、PC製品(386i機投入での失敗はあったが)、WS、Serverのソラリス版だけでなく、WindowsやNTでも扱えるハード戦略に出れば良かったのに。

しかし、スコット・マクニールは、そんな自動車ディーラーみたいな商売は意地でもしなかった。サンは孤立し、一匹狼となる。

2008年7月、サンがオープンソースのDBMSのMySQLを買収する。オラクルが買収するなら理解出来るけど、何故サンが買収するの?と思ったもんだ。


出典:AFP BB News

2000年代の終わり頃、サンは経営難の噂が絶えずIBMの買収が囁かれた。Javaは魅力だが、IBMのハードウェア群と重複するため交渉は成立しなかった。最終的に2009年4月、ラリー・エリソン率いるオラクルがサンを買収することになる。何故データベース屋がサーバー屋を買収するの?と不思議に思ったが、オラクルには奥深い意味があったんだろう。

2010年1月27日、サン・マイクロシステムズなる企業は消えた。私が憧れたワークステーションを製造した企業は地上から消えたのだ。まさに祇園精舎の鐘の声だ。

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