1989年~1997年
前回同様、強い日本だったことがこれでも分かる。1989年2月、富士通がCD-ROMドライブ標準搭載の世界初のマルチメディアパソコンFM-TOWNSを投入した。
FM-TOWNSのスペックは、ご覧の通りだが、2つの違いはメモリとフロッピーディスクが1基か2基の違いだけ。価格はFM-TOWNS-1が338,000円、FM-TOWNS-2が398,000円。独自仕様のTOWNS-OS。
当時はCD-ROMが普及し始めた頃でもあり、マルチメディアなる言葉が流行した。私は遊びの印象しかないFM-TOWNSにさしたる興味はなかった。NEC PC98が圧倒的なシェアを有する頃であり、富士通はPC市場に大きな変化を起こしたかったのだろう。
富士通がテレビCMや雑誌に相当な力を入れていたことが肌で感じた。イベントにも相当な資金を投入していた。あれから30年を超えるにも関わらず、私は「電脳遊園地」なる言葉を鮮明に記憶している。
ちなみにイメージキャラクターであった南野洋子は、この電脳遊園地のステージをドタキャンしてしまうんだ。「みんな来てね!」と前宣伝していた南野洋子本人が来れなくなった。これには諸事情があってのことだが、主催者側はてんてこ舞いになったらしい。
まもなくPC/AT互換機なるDOS/V、Windows3.1が日本を襲うことになり、日本市場はAT互換機に一斉にシフトし始める。FM-TOWNSは改良を重ね この波を乗り超えようとする。
しかし、FM-TOWNSの富士通より国民機とまで称されたNEC PC98シリーズのほうが国内市場のDOS/V移行は深刻だ。間違いなく経営を左右する出来事だ。市場がWindowsに染まる頃は Windowsそのものがマルチメディア機となっていたのだ。
Windows95が登場する頃は富士通はさっさとDOS/V、Windows機に移行している。これは富士通だけでなく、多くのメーカーも同じだ。
FMVとFM-TOWNSが融合したFMV-TOWNS
FMVシリーズとFM-TOWNSが融合したFMV-TOWNSなるものを投入する。なんとも苦肉な戦略とも感じるが、市場はDOS/Vと置き換わろうとする結果だ。
FM-TOWNSは 1997年の製品を最後に、1994年にシリーズ化されたFMVシリーズに吸収統合される感じで消えていった。
マルチメディアパソコンとして 富士通 FM-TOWNS なる華やかな時代は確かに存在したんだ。