自分コンピュータ史

168 サン・マイクロシステムズの成熟期

1980年代後半から1990年代前半
UNIXの覇者 サン・マイクロシステムズ(#3/6)

UNIX戦争

UNIXは1960年代にAT&Tベル研究所で誕生し、大学や研究機関で利用され独自に広がっていく。ビル・ジョイのバークレー版もそれだし、それぞれ大学や研究機関・企業で独自仕様でUNIXは発展していったんだ。

この方言だらけのUNIXを標準化しようと、AT&Tとサンらが中心になって、ひとつの陣営が形成された。もともとAT&Tで誕生したUNIXとバークレー版のUNIXの2つが源流だったからね。

UI陣営(UNIX International):AT&Tベル研究所、サン、インテル、東芝、富士通、ユニシスなど10社前後の陣営

この標準化に異を唱えたのがDECやHPなる企業ってことだ。別なる陣営を形成する。そして、ハードメーカー、ソフト開発メーカー、半導体メーカー等が加わって一大戦争となってしまうんだ。

OSF陣営(Open Software Foundation):DEC、HP、IBM、アポロ、仏ブル、独ニクスドルフ、独シーメンスなど30社前後の陣営


Sun Microsystems 386i/250 Computer Tower(1988)
UNIXとPC/AT互換機のハイブリッドマシン(本体の表と裏)

もし、こんな闘いなんかしないで、UNIXが統一の道に進めばUNIXは広く浸透し、いづれ大衆向けOSが登場した気がする。

そう言えば、サンはUNIXとPC/AT互換機のハイブリッドマシンさえ出している。PC市場の足掛かりになるとした SUN 386i機 は成功するまでには至らなかったけど。実にいろいろあったんだ。

UNIXは標準から枝分かれした派生OSが多かったせいもあって、UNIXで動く定番ソフトが少なすぎた。Windowsはマイクロソフト1社単独開発だから分かり易かった。

徐々にUNIXは一般ユーザーには縁遠いものになっていったんだ。その中、1991年 フィンランドのリーナス・トーバルズがUNIXを見本にしてLinuxなるカーネルを開発し、無償提供する。

これも、派生UNIXのひとつだった訳だ。

WindowsNTの登場、UNIX戦争の終了

ここで、デビット・カトラーが登場する。DEC社の名機VAXのOS VMSを開発した男だ。DEC出身のカトラーは、1988年10月 マイクロソフトに入社し、DECの技術者を何人も引き連れてくるんだ。UNIX陣営は戦々恐々とした。


WindowsNT 3.5 (出典:ru.wikipedia)

この頃のマイクロソフトは、PC市場に関して言えば、既にIBMを抜き去っていた。まだ見ぬWindows OSの不気味な動きにOSFとUIは抗争を解消し、表面上は収束することになるんだ。

結局、UNIXは統一されなかった。各社はそれぞれの思惑でUNIX機を続投していくんだね。

カトラーがマイクロソフトでOS開発を進め、市場にリリースするまでの空白期間は5年近くもあった。各社、UNIX標準化に邁進すれば、OSの主流は変わっていたかもしれないのにね。各社の利権が絡んだUNIXは、いづれ利権の絡まないリーナス氏のLinuxに移っていくって訳だ。

世界を席巻した日本の電気メーカーが自社優先に拘りすぎたのと似ているね。中国や韓国電気メーカーが台頭し始めた時に、日本電気メーカーも結束すれば良かったのに…。そんな話はあったけど実行されなかったんだ。

漫画 島耕作の初芝電産は五洋電機と経営統合し、TECOT(テコット)になった。当時は漫画がリアルを先行したと話題になったんだよ。


【 関連 】
037 UNIXの誕生 と UNIX戦争
148 デビット・カトラーとマイクロソフトNT

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